数学の記述答案で点を落とさない書き方
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答えは合っていたのに、返ってきた答案の点数が思ったより低い。模試でそんな経験をしたことはないでしょうか。
二次試験の数学は、マークシートの共通テストと違い、答案そのものが採点されます。同じ答えでも、書き方しだいで点数が変わります。この記事では、大学が実際に公表している採点の講評をもとに、点を落としやすい書き方と、その直し方を例題で見ていきます。
大学は「答えだけ」を見ていない
いくつかの国立大学は、入試のあとに「出題の意図」や「採点講評」を公表しています。たとえば北海道大学の数学の採点講評には、次のような指摘が並んでいます。
- 数学の解答は、答えが合っていればよいというものではない(令和5年度・後期日程)
- 答案は他の人が読むものとして、答えに至る計算や論証をはっきり書く。同じ値の答えでも、書き方によって評価が変わることがある(令和6年度・前期日程)
- 一般項を予想しただけで証明がない答案は、解答として認められない(令和6年度・前期日程)
- 第三者が採点することを意識して、読みやすい字でていねいに書く(令和5年度・後期日程)
細かい採点基準(何点ずつ引くか)は公表されていません。ただ、講評を読むと、採点者が見ているのは「答えにたどり着くまでの道すじが、読む人に伝わるか」だということがわかります。答案は、採点者という「初めて読む人」にあてた説明文だと考えましょう。
点を落としやすい書き方と直し方
| よくある書き方 | なぜ点を落とすか | こう直す |
|---|---|---|
| 式だけが縦に並んでいる | 式と式のつながり(なぜ次の式になるのか)が読めない | 「よって」「〜を代入して」「〜より」など、つなぎの言葉を入れる |
| 文字や記号をことわりなく使う | 採点者には、その文字が何を表すかわからない | 「点Pのx座標をtとおく」のように、最初に何とおいたかを書く |
| 不等式で最小値を出して終わる | その値を本当にとれるか(等号が成り立つか)を確かめていない | 「等号は x=〇 のとき成り立つ」と書き、その x が条件に合うことを確かめる |
| いくつか計算して規則を予想し、そのまま答えにする | 予想は証明ではない | 式変形で導くか、数学的帰納法で示す |
| 場合分けの一部しか調べていない | 抜けている場合があると、論理が完成しない | 「〜のとき」「〜でないとき」と、漏れなく重なりなく分ける |
| 途中で行き詰まった答案を消してしまう | 方針や途中の結果まで評価されなくなるおそれがある | 正しい方針と途中の結果は残し、どこまで示せたかがわかるように書く |
例題1:等号が成り立つかを確かめる
問題x>0 のとき、(x+1/x)(x+4/x) の最小値を求めよ。
x>0 なので、相加平均と相乗平均の関係より
x+1/x ≧ 2√(x・1/x) = 2
x+4/x ≧ 2√(x・4/x) = 4
よって (x+1/x)(x+4/x) ≧ 2×4 = 8
最小値は 8
1つ目の不等式で等号が成り立つのは x=1 のとき、2つ目で等号が成り立つのは x=2 のときです。2つが同時に等号になる x はないので、積が 8 になることはありません。「8 以上」は正しいのですが、「最小値が 8」は誤りです。実際、x=1 を入れると 2×5=10、x=2 を入れると 2.5×4=10 で、どちらも 8 になりません。
展開すると
(x+1/x)(x+4/x) = x² + 4 + 1 + 4/x² = x² + 4/x² + 5
x²>0、4/x²>0 なので、相加平均と相乗平均の関係より
x² + 4/x² ≧ 2√(x²・4/x²) = 4
よって (x+1/x)(x+4/x) ≧ 4 + 5 = 9
等号が成り立つのは x² = 4/x² のとき、つまり x⁴ = 4 のときで、x>0 より x = √2 である。
x = √2 は x>0 を満たすので、最小値は 9(x = √2 のとき)
ポイント不等式で「〇以上」を示しただけでは、最小値とは言えません。「その値を実際にとる x があるか」を書いて、はじめて最小値になります。
例題2:なぜその条件を使うのかを書く
問題すべての実数 x に対して x² − 2ax + a + 6 > 0 が成り立つような、定数 a の値の範囲を求めよ。
D/4 = a² − a − 6 < 0
(a−3)(a+2) < 0
−2 < a < 3
答えは合っています。しかし、なぜ判別式が負ならよいのかが一言も書かれていません。採点者から見ると、「判別式を負にすればよい」と覚えた手順をあてはめただけなのか、理由がわかっているのかが区別できません。
f(x) = x² − 2ax + a + 6 とおく。y = f(x) のグラフは下に凸の放物線である。
すべての実数 x で f(x) > 0 となるのは、このグラフが x 軸と共有点をもたない(x 軸より常に上にある)ときである。
それは、2次方程式 f(x) = 0 の判別式を D とすると D < 0 のときである。
D/4 = (−a)² − (a + 6) = a² − a − 6 = (a − 3)(a + 2)
D/4 < 0 より (a − 3)(a + 2) < 0
よって −2 < a < 3
ポイント「下に凸」「x 軸と共有点をもたない」という、判別式を使う理由が1行入るだけで、答案の説得力が大きく変わります。もし x² の係数が文字(たとえば a)なら、a=0 のときや上に凸のときも調べる必要があり、この1行を考える習慣がそのまま場合分けの見落とし防止になります。
例題3:予想で終わらせない
問題a₁ = 1、aₙ₊₁ = 2aₙ + 1(n = 1, 2, 3, …)で定められる数列 {aₙ} の一般項を求めよ。
a₁ = 1、a₂ = 3、a₃ = 7、a₄ = 15、…
よって aₙ = 2ⁿ − 1
いくつかの項を計算して規則に気づくのは、とてもよい発想です。しかし、4つの項が当てはまっても、すべての n で成り立つとは言えません。先ほどの北海道大学の講評でも、予想だけで証明のない答案は解答として認められないと書かれています。
aₙ₊₁ = 2aₙ + 1 の両辺に 1 を加えると
aₙ₊₁ + 1 = 2(aₙ + 1)
bₙ = aₙ + 1 とおくと、bₙ₊₁ = 2bₙ、b₁ = a₁ + 1 = 2
よって数列 {bₙ} は初項 2、公比 2 の等比数列なので bₙ = 2・2ⁿ⁻¹ = 2ⁿ
したがって aₙ = bₙ − 1 = 2ⁿ − 1
ポイント項を書き出して予想するのは、方針を見つけるための下書きとして使いましょう。答案には、予想が正しい理由(式変形、または数学的帰納法による証明)を書きます。「bₙ = aₙ + 1 とおく」のように、新しく使う文字を宣言しているところも見てください。
行き詰まったときこそ、書き残す
試験本番では、最後まで解き切れない問題もあります。そんなとき、途中まで書いた答案を消して白紙にするのはもったいないことです。採点基準は公表されていないので「必ず部分点がもらえる」とは言えませんが、大学の講評が過程を重視していることを考えると、正しい方針と途中の結果は残しておく価値があります。
書き残すときは、次の2点を意識しましょう。
- 何をしようとしているのかを書く(例:「最大値を求めるため、t = sin x + cos x とおいて t の2次関数に直す」)
- どこまで示せたのかをはっきりさせる(例:「以上より、t のとりうる値の範囲は −√2 ≦ t ≦ √2 である」)
逆に、誤りだとわかっている式をそのまま残すと、かえって答案全体の印象を悪くします。間違いに気づいたら、二重線で消して書き直しましょう。
ふだんの演習でできる3つの練習
- 答案を「人に読ませる前提」で書く:模範解答を見る前に、自分の答案を読み返し、「この式はどこから来たのか」を他の人が追えるか確かめます。
- 数日後に読み返す:書いた直後は、頭の中で補ってしまうので抜けに気づきにくいものです。数日おいて読み返すと、「とおく」の宣言漏れや、等号の確認漏れが見つかります。
- 模範解答の「つなぎの言葉」に注目する:解答例の「〜より」「〜なので」「〜のとき」に印をつけてみると、どこに理由が書かれているかが見えてきます。自分の答案でも同じ場所に理由が書けているかを比べましょう。
よくある質問
Q. 答案は文章で書いたほうがいいのですか? 式だけではだめですか?
A. 式が中心で構いません。大切なのは、式と式のあいだに「よって」「〜を代入して」などのつなぎの言葉と、必要な理由が入っていることです。長い文章を書く必要はありません。
Q. 時間が足りなくなりそうです。どこまで書けばいいですか?
A. 計算の細かい途中は省いても、「何をして、何が出たか」が追えれば十分です。省いてはいけないのは、等号の確認、場合分けの根拠、新しい文字の宣言のような、論理のつながりに関わる部分です。
Q. 大学ごとに書き方の決まりはありますか?
A. 決まった形式はありませんが、大学によっては出題の意図や採点講評を公表しています。志望校の講評があれば、どんな答案が評価され、どんなところで点を落としているかを確かめておきましょう。
mondaibase の演習問題の解説では、正解の道すじだけでなく、つまずきやすいポイントや、よくある誤答のパターンもあわせて書いています。
参考
- 北海道大学「令和5年度 一般選抜(後期日程) 数学 出題の意図・採点講評」 https://www.hokudai.ac.jp/admission/R5_B-Mathanswer.pdf
- 北海道大学「令和6年度 一般選抜(前期日程) 数学α 出題の意図・採点講評」 https://www.hokudai.ac.jp/admission/R6_A-Mathanswer1.pdf